ムーミンと王子製紙 森がつなぐ紙のやさしさ
2025年、王子ホールディングスとムーミンがコラボレーションを発表しました。 日本を代表する製紙会社と、フィンランド生まれのキャラクター「ムーミン」。この意外とも思える組み合わせに、多くの人が興味を持ったのではないでしょうか。
このコラボでは、ムーミンをあしらったパッケージのティッシュが発売されるほか、王子の森の木材を使った木製ムーミン像の展示や、森と紙をテーマにしたイベントなども展開されています。
現代は、大量生産・大量消費が前提となった社会です。 ものの背景や素材の成り立ちを意識する機会は、私たちの暮らしの中で徐々に少なくなっているようにも感じます。
そんな今だからこそ、「紙のもとには森がある」という当たり前で大切な事実を、ムーミンという親しみやすい存在を通して改めて伝えようとするこの取り組みには、やさしくも力強いメッセージを感じました。
ムーミンの世界と森の時間
ムーミンの物語は、自然に囲まれたムーミン谷で過ごす、静かで豊かな日々を描いています。 家族との時間や、季節の変化、自然とのつながり。物語の中に登場する何気ない風景は、どこか懐かしく、心を落ち着かせてくれます。
一方、王子製紙(王子ホールディングス)は、紙の原料となる木材を長い時間をかけて育て、計画的に使い、また植えるという「持続可能な森林経営」を実践してきた企業です。 その規模は国内外で約63万ヘクタールにも及び、紙づくりと森林保全の両立を追い求めてきました。
ムーミンと王子製紙。まったく異なる領域のようでいて、どちらも「森の時間」を大切にしている点で、静かな共通点があるように感じられます。
紙にふれることで見えてくるもの
日々の暮らしの中で、紙を意識することは少ないかもしれません。 けれども、手紙を書くとき、贈り物を包むとき、ノートにメモを取るとき、私たちは無意識のうちに「紙のやさしさ」に触れています。
ムーミンのデザインが施されたティッシュを手に取ることで、子どもから大人まで、紙の背景にある自然や森を少しだけ意識できるかもしれません。 このコラボは、そんな“ふとした気づき”を届けてくれる取り組みです。
私たちPAPER Entranceが感じたこと
私たちにとっても、王子製紙は長年にわたる大切な仕入れ先のひとつです。 日々さまざまな紙と向き合うなかで、紙の質感や機能だけでなく、その成り立ちや背景にも想いを寄せています。
紙は、ただ情報を伝えるための素材ではなく、誰かの気持ちや感性をやさしく包みこむことができる、不思議な存在です。 そして、その一枚一枚の裏には、必ず「森の恵み」があります。
ムーミンと王子製紙のコラボレーションは、そうした紙の本質を改めて感じさせてくれるものであり、私たちのブランドが大切にしてきた考え方とも自然に重なります。
心に残った、ひとつの言葉
以前、王子製紙の社員の方が「製紙業は農業に近いんですよ」と話してくださったことがあります。 木を育て、使い、また育てる。自然とともに長い時間をかけてものづくりをする姿勢は、いまの時代には少し珍しく、しかしとても尊いものだと感じました。
このムーミンとのコラボレーションも、派手なプロモーションというより、そんな丁寧な歩みの延長にあるように思えます。
森を想い、紙を選ぶ ― 私の好きな王子製紙の紙たち
王子製紙には、環境への配慮と、紙そのものの美しさを両立した製品がいくつもあります。 ここでは、その中でも私自身が素敵だと感じた3つの紙をご紹介します。どれも、プロの印刷会社でもとても評価が高く、クレームが少ないと感じています。
OKプリンス上質エコグリーン
- 古紙パルプを70%配合した絶妙なバランスの再生紙
- 雑味がなく、上品な仕上がり
- 色味と質感が整った美しい紙再生紙の概念を覆すような美しい紙
マシュマロCOC
- かわいい名前の通り、やわらかく、ふんわりとした印象
- 高白色でしっとりとした質感
- 環境に配慮しつつ印刷適性も高い表現力が高く、印刷仕上がりも美しい
OKアドニスラフ
- 中質紙ならではの素朴な風合い
- 白色度は低めでも柔らかさが伝わる
- 整いすぎない自然な質感が魅力整いすぎていない自然な風合い
どれも、実用性とやさしさをあわせ持ち、私たちPAPER Entranceの考える「紙の魅力」を体現してくれている紙たちです。今後、それぞれの紙について詳しくご紹介する記事も書いていけたらと思っています。
最後に
ムーミンの世界観と、王子製紙の紙づくり。そこに流れる静かな共通点に気づいたとき、私たちはもう一度「紙っていいな」と感じられるのではないでしょうか。
紙は、情報やモノだけでなく、感性ややさしさを伝えることができる素材です。 このコラボが、紙と森の関係、そして自然とともにある暮らしについて、少しでも関心を持つきっかけになれば、それはとても意味のあることだと思います。
私たちPAPER Entranceもこれから、小さくても温かな気づきが生まれるような紙との出会いを、丁寧に届けていきたいと思います。