上質紙 vs コート紙 “白い紙”の奥深い違いを解説

はじめに
上質紙やコート紙という言葉は、私たち紙業界では日常のように使われていますが、一般の方には少し聞きなれないかもしれません。「どちらも白くてきれいな紙」という印象を持たれる方も多いでしょう。しかし、実際にはその質感、光の反射、指先で触れたときの感覚まで、まったく異なる個性を持っています。
さて、紙には大きく分けて「塗工紙(コート紙)」と「非塗工紙(上質紙など)」があります。塗工紙は顔料を塗ってなめらかに仕上げ、鮮やかな発色を実現する紙。非塗工紙は繊維の風合いをそのまま活かした自然な紙です。この違いは、単なる見た目だけでなく、印刷の仕上がりや使い心地にも大きく影響します。
上質紙は、ノートや書籍、コピー用紙など、手にしたときのやさしさや書き心地を大切にしたい場面で選ばれます。一方、コート紙は雑誌やパンフレット、ポスターなど、鮮やかな色や美しい写真を届けたいときに欠かせません。どちらの紙も、印刷物を通して「どんな思いを伝えたいか」を形にしてくれる存在です。
この記事では、上質紙とコート紙の違いを、質感・見た目・筆記・印刷の4つの視点からやさしく解説します。紙を選ぶ楽しさを感じながら、あなたの表現にぴったりの一枚を見つけてみてください。
表面の違い
上質紙は、表面に特別な加工をしていない自然な紙です。なめらかでありながらも、わずかにパルプの繊維感を感じることができ、指で触るとさらさらとナチュラルな印象です。対して、コート紙は表面に白い顔料や接着剤を塗り、つるつるとした艶やかで光沢感のある仕上がりです。商業印刷(オフセット印刷)では、インクが紙の上にとどまるため、発色が鮮やかになります。

見た目の違い
商業印刷(オフセット印刷)では、上質紙は、自然で温かみのある印象を与えます。一方、コート紙はインクが紙の上にとどまるため、発色が鮮やかになります。なお、コート紙は、光沢のあるタイプとマットタイプに分かれます。光沢タイプは写真やカラー印刷を一層鮮やかに見せます。

筆記適性の違い
上質紙は鉛筆、ボールペン、万年筆など、ほとんどの筆記具と相性が良く、にじみにくいのが特長です。ノートやコピー用紙など、書くことを目的とする紙に多く使われます。
一方、コート紙は表面がつるつるしているため、鉛筆ではすべりやすく書きづらい場合があります。ただし、油性マジックはにじまずはっきり書けるため、チラシやポスターに手書きで加筆する際などに向いています。水性マジックは、乾くまでに時間がかかります。(以下画像のように、筆記後すぐに指でこすったら、インクが擦れてしまいます。)

印刷適性の違い
上質紙は文字中心の印刷に向き、小説や教科書など長時間読むものに適しています。コート紙は写真やデザインを美しく見せる印刷に最適で、雑誌やパンフレットでよく使われます。
家庭用プリンタとの相性
- レーザープリンタ:上質紙はトナーがしっかり定着し、ビジネス資料などに最適。コート紙は色鮮やかに出ますが、機種によっては定着ムラが出る場合もあります。
- インクジェットプリンタ:上質紙では、インクがスッと紙に定着しきれいに印刷できますが、コート紙ではインクが吸着せず、にじんでしまうため不向きです。以下画像は、印刷後にティッシュで擦ってみた写真です。(コート紙は、乾かずインクが擦れてしまいます。

上質紙とコート紙の比較まとめ
| 項目 | 上質紙(自然な紙) | コート紙(加工された紙) |
|---|---|---|
| 表面 | さらっとして自然な風合い | つるつるでなめらか |
| 見た目 | 落ち着いた白さ | 光沢あり(鮮やか)/マット(上品で控えめ) |
| 筆記適性 | あらゆる筆記具と相性が良い。にじみにくく、文字がはっきり書ける。 | 鉛筆・水性ペンはすべりやすいが、油性マジックははっきり書ける。 |
| 印刷適正 | インクジェット○/レーザー○ | インクジェット✕/レーザー○ |
| 主な用途 | ノート、コピー用紙、書籍、資料 | 雑誌、ポスター、パンフレット、カタログ |
まとめ
上質紙とコート紙は、どちらも「白くてきれい」な紙でありながら、まったく異なる魅力を持っています。上質紙は、やわらかな手ざわりと自然な風合いで、読む人や書く人にやさしく寄り添う紙。コート紙は、つややかな質感と鮮やかな発色で、見る人の目を惹きつける紙です。
どちらの紙にも「伝える力」があります。静かに語りかけるような上質紙、華やかに印象を残すコート紙。用途や目的によって選ぶ紙が変わるだけで、同じ内容でも印象ががらりと変わるのが紙の面白さです。
ペーパーエントランスでは、そんな紙の魅力を日々の暮らしや制作の中で感じていただけるよう、やさしく、わかりやすくお伝えしています。この記事が、紙を選ぶ楽しさや、あなたの表現を少し豊かにするきっかけになれば幸いです。
なお、上質紙に関するコラムは他にもございます。よろしければご覧ください。